母の好きな食べ物

母は鍋焼うどんが好きだった気がする。出前を取ったときに一人だけ頼んだことがあるようなうっすらとした記憶がある。病気したときに食べさせてもらったという思い出話もしていていた気がする。

母が、食べ物について好き嫌いを言う場面をほとんど見たことがないし、旅先でも自分の好みを主張して店を選んだりということはなかった。外食の時に店を選ぶのはいつも父で、そのこと自体にも文句を言っている場面も見ていない。

母が好んで食べていたものを思い出そうとしても、切干大根の煮物や、ひじきの煮物をおかずに食事している姿がうかぶだけ。いつも丼に山盛りになるような大量の煮物を作って、子ども達が揚げ物や肉などを食べている横で、自分は煮物だけで食事を済ませていた。餃子を作っても「何個ずつ?」と聞くと子どもに母の分を譲っていた。理髪店の仕事が忙しくて食事を作る時間が無い時には、近所の肉屋で惣菜のコロッケを買ったり、豆腐屋で厚揚げを買ったりしておかずにしたが、そのときには母の分は数に入っていなかった気がする。自分は言われるままに買いに行っていただけだったが、子供心に多少の違和感を感じていた記憶がある。

他に思い出すのは、果物が好きだったこと。食卓に果物が無いということは無かった。裕福とは言えない経済状況の中で、母のやりくりでひもじい思いはしなかった子ども時代。食に関しての母の関心は「家族の健康」であったことは確かだ。

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